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幕末維新備忘録

幕末から明治維新に関する備忘録

2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

武士は困るということを言うべきものではない――高杉晋作の家訓

「武士は困るということを言うべきものでない。困る時は、即ち死ぬる時なり、是れ我が家訓也」(『高杉晋作』横山建堂) photo credit: Philerooski via photopin cc 晋作に影響を与えた家訓 晋作は「困る」ような局面に陥らないようにしていた。もちろん、…

大久保利通の少年時代

明治維新政府でもっとも威厳があった大久保利通だが、少年時代はイタズラ好きだったという。『大久保利通』『大久保利通伝』を要約しながら紹介したいと思う。 入来でのイタズラ 入来(いりく)の湯治場には、冷水の滝と熱湯の滝の両方があり、それが混和し…

大久保利通の威厳と風貌

大久保利通の威厳についてはいろいろとエピソードがある。 大久保とともに内務省で勤務していた速水堅曹(はやみ けんそう)は、士族授産などつまらぬと口にしたところ、大久保に叱られたと語り、その恐ろしさについてつぎのように語っている。 大久保公はギ…

幕末薩摩藩の士風と教育

むかしの薩摩では、「三年に片頬」 といわれた。武士はげらげら笑ってはいけない。三年に一度ぐらい、それも片頬だけで笑え、というのものだが、歯をみせて笑わないにせよ、薩摩人はひとに接するときにはたえず微笑をしていたように見える。西郷という人もそ…

『明治人物夜話』森銑三――書評

知りたいこと、関心のあることだけを抜き書きしようとしたのに、気がつくとほとんどをノートに写していたことがある。とくに森銑三氏の著書にはそういう魅力がある。 良書とは、要するに著者の誠実な心から生まれて、その意図したところが十分にかつ的確にそ…

戦国大名武田家の礎を築いた武田信虎

武田信虎は甲斐を統一した猛将として知られる。 家督争いを武力で収め、守護職に逆らっていた国人(こくじん)衆を撃破する武功もあった。しかし最大の功績は本拠を移したことだろう。 躑躅ヶ崎館 居館を石和(いさわ)から甲府に移す。そして躑躅ヶ崎館(つ…

北条早雲の治政と家訓

「北条早雲というと、誰もただ炯眼な戦将とばかり思うけれども、あれはまた非凡な政治家だヨ」と勝海舟が言っているように早雲は政治力に優れていた。繁文縟礼の弊を一掃し、法を三章に約し(劉邦も戦乱のとき法を三章にしてた)、苛税免じて、民力を養った…

夫れ主将の法は、務めて英雄の心を攬《と》り有功を賞禄し、志を衆に通ず――北条早雲の人心掌握

北条早雲(正式には伊勢宗瑞《そうずい》)は、『三略』の一節、「夫れ主将の法は、務めて英雄の心を攬《と》り有功を賞禄し、志を衆に通ず」を聴いただけで、了悟した、と言い立ち去ったという逸話がある。 ではどのようにして、英雄の心を掴もうとしたのだ…

ゲーテによる無頼的態度への批判

「天分は自分だけで完成されるという妄想にとりつかれている」(『ゲーテ全集15巻 書簡』)と、晩年のゲーテは後進の無頼派的態度を嘆いています。(ゲーテの無意識と天才 ) フランスのヴィクトル・ユゴーを賞賛し、それとは反対に若いドイツの詩人を学識…

kindleで徳富蘇峰の「近世日本国民史」が読める!

kindleで徳富蘇峰の作品が読めることを最近知りました。名著でありながら入手困難だった『近世日本国民史』が簡単に購入できます。スマートフォンに入れておけばどこにいても空いた時間に読むことができる。織田信長の時代から明治維新までを叙述した「畢生…

早川勇を危難から救った中岡慎太郎、自ら斬られに行こうとした早川勇

「馬関の稲荷町へ女郎買いへ行こう」と、中岡慎太郎がすすめた。誘われた早川勇は、中岡慎太郎が遊里に足をふみこむ性分の人ではないので、怪しんで訊いた。「それは君に不似合いなことと思う。僕の気を引くためか。そんなことに心を奪われていると思うか」…

「フランス士官の下関海戦記」書評 

本書は、フランス人から見た幕末の日本が書かれています。当時の日本が、外国人にはどのように写ったか。そして何を伝えるべくして書きあらわしたかが、本書を手に取った自分の関心でした。本書で際立っている描写をまとめますと、 「日本人の住居の際だった…

三島由紀夫と陽明学

晩年の三島由紀夫は西郷隆盛を崇拝していた、ということが 『西南戦争―西郷隆盛と日本最後の内戦 』の巻末に書かれている。戦後の歴史学の世界において西郷隆盛は否定的な評価となったが、「時として強烈な感化力をはなった」ようで、その力に包まれていた気…

長州を舞台にした大河ドラマが放送された記念として

自分の好きな時代ということもあるけれど、面白かったです。 とはいえ、実際に放送される前までは、どんな構成になるか不安でした。一般にあまり知られていない吉田松陰の妹を主役にしていることから、史実性の乏しい作品になるのではないか、そのために人物…

精神活発にし、危急に臨み、『明治維新』を『明治革命』に堕落させなかった勝海舟

「明治維新」が「明治革命」に堕落せずにすんだのは、旧幕府の徳川慶喜、勝海舟が内乱を最小限に抑えたことが与って力があった。 本音は不明ながら大西郷でさえ、 「徳川慶喜の首も、勝海舟の首も斬らねばならない」(西郷から大久保宛の書簡)と述べていた…

『センスをみがく 文章上達事典』に書かれた作家たち

ブログを書き始めたこともあり、本格的に文章を上達させなければと「センスをみがく 文章上達事典」を手に取りました。参考になることも、おもしろいことも書かれている本です。執筆するテクニックの説明も面白いのですが、紹介される作家のエピソードや考え…

散歩しながら世上を観察した勝海舟

「民の声は神の声」という格言がユダヤ人のタルムードにあり、中国の古典『春秋左氏伝』には「民の欲する所、天必ずこれに従う」との記述がある。 勝海舟のつぎの談話もまた、上記二つの格言に通ずるものがある。 書生だの浪人だのという連中は、昔から絶え…

執筆を続ける勇気をくれたことへの感謝として

あけましておめでとうございます。新年最初の記事では、このブログをはじめる前から、伝えたいと思っていた感謝の気持ちを綴らせてもらいます。ある女性への個人的な内容ですが、このブログをはじめるきっかけでもあったので、ここに載せることにします。 小…