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幕末維新備忘録

幕末から明治維新に関する備忘録

西郷隆盛と犬の話

上野公園の西郷隆盛像が薩摩犬をつれていることからもわかるように、西郷隆盛は愛犬家だった。西郷と犬の面白い逸話があったので、『大久保利通 』『幕末・明治名将言行録【詳注版】』から紹介したい。

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大久保から妾を持つことをすすめられる

 

西郷と大久保が親密だったことを示す話として、米田虎雄は下記の談話を記者に聞かせている。

 

西郷があまりに肥満(ふと)るから心配になって、吉井(友実)なんかと話して妾(めかけ)でも置かしたら好かろうと言うので、西郷に勧めると西郷は、
「それはヨカ、置きましょう」と言って二、三日すると、佳(よ)い奴が手に入った見に来てくれとのことで、蛎殻町の屋敷へ見に行くと、妾というのは女ではなく大きな犬が二匹いたのだった、と大久保さんが笑って話されたことがある。――米田虎雄談『大久保利通

 

これは西郷らしいエピソードだとおもう。この話から愛犬家であり、ユーモラスな彼の人柄を知ることができる。

 

幕末明治名将言行録には、この後日談とおもえる逸話が載っている。現代語にすれば以下のような話になる。

 

東京で暮らしているときの西郷は身の回りの世話は下僕の手にゆだねていたので、家には女中がいなかった。あるとき家を訪れた客が、妾を持つことを勧めてきた。すると西郷は意外な返答をする。
「実は私には二人の妾がある。一人は於鶴(おつる)という名で、もう一人は於松(おまつ)という」

客はそんな話を聞いたことはなかったので、信じられず、この席に侍らせよ、と頼んだ。西郷は、於鶴と於松を連れてくるよう下僕に命じる。それから間もなく来たのは、二頭の猟犬であり、西郷はその頭を撫でながら、
「これが於鶴、あれが於松、ともにわが愛妾である。両者共になかなか美人であろう」と、誇らしげに語ったという。