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幕末維新備忘録

幕末から明治維新に関する備忘録

長州を舞台にした大河ドラマが放送された記念として

 自分の好きな時代ということもあるけれど、面白かったです。

 とはいえ、実際に放送される前までは、どんな構成になるか不安でした。一般にあまり知られていない吉田松陰の妹を主役にしていることから、史実性の乏しい作品になるのではないか、そのために人物象がゆがめられるのではないか、と。

 初回の放送を観て、史実との関係はともかく、映像作品として楽しもうという気持ちになりました。

 僕個人は歴史への関心に導かれ、演出、構成、撮影などドラマによる表現を楽しむことができる。そうしておおまかな時代の流れを復習でき、あるいは新たな興味が生まれかもしれない。もちろん放映されることが史実とは限らない。細部にはフィクションが多いだろう。演出だと割り切らないといけない。しかしそれによって魅力的な作品になり、偉人を知るきっかけになるならば楽しく視聴できる。

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 去年の春、萩を旅し、円政寺の住職さんから大河ドラマの話を聞いたとき、僕は嬉しかった。萩の市中で宣伝されていたこともあり、既に知っていたのですが、大河ドラマに登場する人物の話、またテレビ局が取材に来た話を聞いて、さらに興味を持つことになりました。
 円政寺のとなりに小田村さんの家がある。この小田村さんが、井上真央さん扮する杉文の夫になる、ということも説明してもらいました。高杉晋作が好きで長州藩について多少の関心があったけど、小田村伊之助については(松陰が江戸に送られてからの)松下村塾との関係しか知らなかったので、作品を身近に感じる貴重な情報となった。

 以下ネタバレになるかもしれません

久坂と杉文について

  主役は松陰の妹の杉文ですが、井上真央さんのような綺麗な人ではなかったという。松陰と同年齢の中谷正亮が、松陰の意向を知り結婚の話を久坂にすすめるが、久坂は別嬪でないから嫌ったという。すると、中谷は「これは君の平素に似合わない言葉を聞く。立派な男が妻を娶る。どうして容色を気にするのか」ということを厳然たる態度で言ったという。これにはさすがの久坂も屈服して、娶ることにしたとか。こういう話があるので中谷の媒酌はすこぶる妙だ、と村塾で話題になったというくだりが横山建堂の『高杉晋作』にある。

長州藩と女性

 長州藩士のおもしろいところは、女性関係でいろいろと物語があることだろう。長州侍はモテた。情人(いろ)に持つなら長州縮(ちぢみ)、なんて歌が祇園にあったらしい。
 なかでも桂小五郎と松菊は有名。南條範夫氏がエッセイに書いている。
 桂の一番はじめの奥さんは、防長随一の美女として知られていたという。しかしわずか数ヶ月で逃げられたそうですね。イケメンの桂なのに、と思ってしまう。理由は、
「富裕な生家に比べて、質素な、ケチとさえ思われる婚家の生活、小五郎の姉八重子との疎隔、小五郎の余りの多忙、などのためである」だとか。
 そういえば桂の幼少期について、はな垂れ小僧で、どちらかといえば期待されてなかった、という話もある。それが理由かは知らないけれど、松陰先生も、僕は桂の志を知らなかった、と入江への手紙で打ち明けている。

 

 松陰先生は三十歳まで結婚しない、と決めていた。結局、三十にならず刑死となる。高杉晋作もそれを見習おうとして、同志に宣言している。が、宣言した数ヶ月後に結婚している。高杉晋作に落ち着いた生活をさせるための結婚だったけれど、あまり効果がなかったようですね。
 高杉晋作も二十代のうちになくなってしまう。その高杉晋作の未亡人が、吉田稔麿について語っている。現在はどうなのか知らないけれど、数年前まで長州藩の人物では吉田稔麿が人気でしたね。とくに若い女性の間で。未亡人の話では、江戸の牢から出たばかりで、赤穂義士の誰それみたいだったとか。高杉晋作が蟄居を命じられているとき密会している。それで記憶にとどめていたが、あまり印象には残っていないようです。江戸の牢から出たというのも、事実とは思えない。


 久坂、桂以外の長州のイケメンといえば国司信濃が思い浮かぶ。若くして藩の重役に抜擢され、しかし藩の保身のために処分されてしまう悲劇の人。この人についても取り上げられれば嬉しいのですが。
 次回からは、限られた放送時間の中でどこまで長州の魅力を表現されているかを楽しみにしたい。そしてこれがきっかけとなり、長州の人物への関心が高まればとおもいます。