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幕末維新備忘録

幕末から明治維新に関する備忘録

高杉晋作が見た夢

 高杉晋作は、上海で不思議な夢をみた。天照大神孔子、キリストの3人がでてきた。また野山獄に入っているときにも、不思議な夢を見ている。

 

夢にしたがい書かれた『投獄記』

 野山の獄の夢では、白髪の老人が嘲りながら、

「この苦しい状況に陥った理由を聴こうではないか」といった。

高杉はこたえる。
「楊震の四知(天知る、地知る、我知る、子(あなた)知る)ということがある。ご老人も知る、わが心も知る。どうして口にする必要があろうか」

 夢の中の老人は笑って、
「そうはいっても、子孫も知ることができるだろうか」といって消えた。
 ハッ、と目覚めた晋作は、心中を書き残して、子孫に伝えなければいけない、と思い立って『投獄記』を記しはじめた。

 『投獄記』では、

「子孫の者たちよ、我が直言直行したために奇禍(災難)を身にうけたことを見て、学問の一端にすることを願う」


「日本にしても中国にせよ、古今かわらず、忠臣は苦しみ姦臣は栄えるのだから、現実のありさまは実に味気ないものだ。幸福は、求めて得ることはできない。わざわいは、恐れて避くべきではない。我が子孫たる者、奇禍を恐れず、時好に連れず、ただ忠孝の道を励むべことを望む」

 

「年少の時に、熊沢蕃山の集義書を読んで、学問をなすほどならば、世間から利発といわれる人になるな、世間の愚者となるべし、というところに感得して、世間の愚者たらんことをねがい、ようやく牢獄に陥るまでに勉強した。それだから世間の利発な人は、我が志を知ることができないだろう。(中略)ただ我が志を語るべきは、夢に逢いし白髪の翁のみ」ということを記した。

夢について思うこと

 歴史上の人物と夢に関する逸話はたくさんありますね。荘子の『胡蝶の夢』、孔子は「周公」を夢に見なくなったことを嘆き、カエサルは自分の母親を強姦する夢を見たり、南方熊楠北条早雲……数えきれないほどです。

また、僕なんかもそうですが、不思議な夢を見る人はおおいのではないでしょうか。夢には、僕たちが抱きがちな神秘的な力はない、とする説もあります。しかし、夢によって心構えが変わった事例があるのですから、僕としては夢が告げることを尊重したくなります。もちろん、自分勝手に、前向きに解釈して(笑)。